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「涙なしには読めない名作「小さき者へ」-幼な児を遺して逝く母の無念と万感の思い」
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涙なしには読めない名作「小さき者へ」-幼な児を遺して逝く母の無念と万感の思い

有島武郎

リリース日 : 2014/06/13

℗ © 2014 響林社(しみじみ朗読文庫)

母親の愛情に抱かれて育つべき時期に、その母親を結核で失ってしまった有島の幼い3人の子供達。愛児を遺して逝かねばならないと悟った時の無念と子等への母親の万感の思いは、次の一節から溢れ出てきます。 「いよいよH海岸の病院に入院する日が来た。お前たちの母上は全快しない限りは死ぬともお前たちに逢わない覚悟の臍(ほぞ)を堅めていた。二度とは着ないと思われる――そして実際着なかった――晴着を着て座を立った母上は内外の母親の眼の前でさめざめと泣き崩れた。女ながらに気性の勝れて強いお前たちの母上は、私と二人だけいる場合でも泣顔などは見せた事がないといってもいい位だったのに、その時の涙は拭くあとからあとから流れ落ちた。その熱い涙はお前たちだけの尊い所有物だ。」 「お前たちが六つと五つと四つになった年の八月の二日に死が殺到した。死がすべてを圧倒した。そして死がすべてを救った。 お前たちの母上の遺言書の中で一番崇高な部分はお前たちに与えられた一節だった。もしこの書き物を読む時があったら、同時に母上の遺書も読んでみるがいい。母上は血の涙を泣きながら、死んでもお前たちに会わない決心を飜さなかった。それは病菌をお前たちに伝えるのを恐れたばかりではない。またお前たちを見る事によって自分の心の破れるのを恐れたばかりではない。お前たちの清い心に残酷な死の姿を見せて、お前たちの一生をいやが上に暗くする事を恐れ、お前たちの伸び伸びて行かなければならぬ霊魂に少しでも大きな傷を残す事を恐れたのだ。幼児に死を知らせる事は無益であるばかりでなく有害だ。葬式の時は女中をお前たちにつけて楽しく一日を過ごさして貰いたい。そうお前たちの母上は書いている。 「子を思う 親の心は日の光 世より世を照る大きさに似て」 とも詠じている。」

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